玄米について調べていると「玄米を食べるとデトックスできる」「身体の毒素を出してくれる」といった説明を目にすることがあります。玄米には食物繊維が含まれているため便通と結びつけてデトックスによいと紹介されることもありますが玄米と身体の排出との関係は食物繊維だけでは説明できません。
玄米にはビタミンB群・ビタミンE・マグネシウム・マンガン・亜鉛・銅なども含まれており、それぞれ身体の代謝・酵素反応・抗酸化など異なる働きと関係しています。一方で人の身体には肝臓・腎臓・腸などを通して、さまざまな物質を代謝・処理・排出する仕組みがもともと備わっています。
では玄米を食べることと、こうした身体本来の仕組みにはどのような接点があるのでしょうか。そして「玄米にはデトックス効果がある」と考えてよいのでしょうか。今回は玄米に含まれる食物繊維・ビタミン・ミネラルの働きと身体本来の代謝・排出の仕組みを一つずつ分けながら玄米とデトックスの関係を科学的な視点から考えていきます。
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玄米にデトックス効果はある?
玄米について調べていると「玄米を食べるとデトックスできる」「身体にたまったものを外へ出してくれる」といった説明を目にすることがあります。健康的な食生活を考えている方にとって玄米とデトックスの関係は気になるところかもしれません。
ただ「デトックス」という言葉は幅広い意味で使われています。一般には身体にとって不要なものを外へ出すという意味で使われることがありますが医学における解毒とは必ずしも同じ意味ではありません。また「毒素」や「老廃物」という言葉も何を指しているのかによって意味が変わります。
人の身体では食べ物から取り入れた成分や身体の中で生じた物質などが、そのまま身体に残り続けているわけではありません。肝臓ではさまざまな物質の代謝や処理が行われ腎臓では血液を濾過しながら不要な物質などを尿として排泄します。腸からは消化されなかったものなどが便として排出されます。
では玄米を食べることで、こうした身体の外へ出す働きが特別に高まり「毒素」が排出されるのでしょうか。現在の科学的な知見からは玄米そのものが身体に蓄積した毒素を吸い取ったり玄米を食べるだけで特定の毒素が排出されたりするという意味で玄米に特別な「デトックス効果」があると単純に考えることはできません。
一方で、ここで「玄米とデトックスはまったく関係がない」と考えてしまうのも少し違います。玄米には食物繊維をはじめビタミンB群・ビタミンE・マグネシウム・マンガンなど、さまざまな栄養成分が含まれています。食物繊維は便通などと関係しビタミンやミネラルの中には身体の正常な代謝や酵素反応などに関わるものがあります。
つまり玄米とデトックスの関係を考える場合には「玄米が毒素を直接外へ出してくれるのか」という視点だけではなく身体にもともと備わっている代謝・処理・排出の仕組みと玄米に含まれる栄養成分との関係を分けて考える必要があります。
玄米そのものが毒素を排出することと玄米から摂取できる栄養素が身体の正常な働きに利用されることは同じではありません。この違いを理解することが「玄米でデトックス」という言葉を科学的に考える第一歩になります。
玄米が「デトックスによい」といわれるのはなぜ?
玄米がデトックスと結びつけられる背景の一つには玄米が白米とは異なる状態で食べられるお米であることがあります。稲から籾殻を取り除いた玄米には糠層や胚芽が残っており、さらに精米して白米にすると、その多くが取り除かれます。
そのため玄米と白米では含まれている栄養成分にも違いがあります。玄米には食物繊維のほかビタミンB群・ビタミンE・マグネシウム・マンガンなどが含まれており、これらの成分が残った状態で食べられることが玄米の特徴の一つです。
中でもデトックスという言葉と結びつけられやすいのが食物繊維です。食物繊維は人の消化酵素では消化されにくく消化管を通り便の形成や排便などと関係しています。そのため玄米を食べることと排便することが結びつき、そこから「身体の不要なものを出す」「身体をきれいにする」といったイメージへ広がったと考えることができます。
ただし排便することと一般にいわれる「毒素を排出すること」は同じではありません。便には消化されなかった食物成分・腸内細菌・腸管から剥がれた細胞などさまざまなものが含まれています。便が出たからといって、それだけで身体に蓄積していた何らかの「毒素」が排出されたと判断することはできません。
また玄米には食物繊維だけでなく身体の代謝に関わるビタミンやミネラルも含まれています。こうした栄養成分の存在も「玄米は身体によい」「身体を整えてくれる」というイメージにつながりデトックスという言葉と結びつけて語られる理由の一つになっていると考えられます。
玄米は自然食や食養などの食文化とも長く結びついてきました。精製度の低い穀物をできるだけ自然な形で食べるという考え方の中で玄米が選ばれてきた歴史もあり現代の健康志向や「デトックス」という考え方とも重なりやすい食品といえるでしょう。
しかし、ここで一つ注意しておきたいことがあります。玄米に食物繊維・ビタミン・ミネラルが含まれているという事実と玄米そのものに「デトックス効果がある」ということは別の話です。栄養素にはそれぞれ身体の中で異なる役割があり食物繊維・ビタミン・ミネラルをすべて「毒素を出す成分」として一括りにすることはできません。
では玄米に含まれるこれらの成分は身体のどのような働きと関係しているのでしょうか。玄米とデトックスの関係をもう一段深く理解するためには、まず人の身体が不要なものをどのように代謝・処理し身体の外へ排出しているのかを知る必要があります。
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身体は不要なものをどう代謝・処理・排出している?
玄米とデトックスの関係を考える前に知っておきたいのが人の身体にはもともとさまざまな物質を代謝・処理し不要になったものを身体の外へ排出する仕組みが備わっていることです。その中心となるのが肝臓・腎臓・腸などです。
肝臓は食事から取り入れた栄養素の代謝だけでなく、アルコールや薬物をはじめとするさまざまな物質の代謝にも関わっています。身体に入った物質の中には、そのままでは排泄しにくいものもあります。肝臓などでは酵素による反応を通して物質を変化させ、その後の排泄につながるよう処理しています。
こうした生体内変換では一般に第I相反応・第II相反応などと呼ばれる過程が知られています。第I相ではシトクロムP450などの酵素が関わる反応があり第II相ではグルクロン酸・硫酸・グルタチオンなどとの抱合反応が行われます。物質によって経路は異なりますが、こうした仕組みを通して処理されたものの一部は尿や胆汁などを介して身体の外へ排泄されます。
腎臓も排泄を考えるうえで重要な臓器で血液を濾過した後、身体に必要な水分や成分を再吸収しながら尿素などの代謝産物や余分な成分を尿として排泄する働きを担っています。もう一つの経路が腸で食べ物は消化・吸収された後、消化されなかった成分や腸内細菌などを含む便が形成され身体の外へ排出されます。また肝臓でつくられた胆汁を介して腸へ排泄される物質もあります。
このように身体の中では何か一つの臓器が「毒素」をまとめて取り除いているわけではありません。肝臓での代謝や生体内変換・腎臓からの尿による排泄・腸からの便による排出など複数の仕組みがそれぞれの役割を担っています。
そして、これらの働きの多くにはさまざまな酵素反応や代謝反応が関わっています。ここで玄米との接点が見えてきます。玄米が肝臓や腎臓に代わって身体を「デトックス」するわけではありませんが玄米には身体の正常な代謝や酵素反応などに必要なビタミン・ミネラルが含まれています。
玄米とデトックスの関係を考えるときには「玄米が何を身体の外へ出すのか」だけを見るのではなく「玄米から摂取する栄養素が身体の中でどのように利用されているのか」という視点も必要になります。
玄米のビタミン・ミネラルは身体の代謝をどう支える?
玄米には食物繊維だけでなくビタミンB1・ビタミンB6・ナイアシン・ビタミンEのほかマグネシウム・マンガン・亜鉛・銅などさまざまなビタミン・ミネラルが含まれています。これらがすべて「デトックス成分」として働いているわけではありません。それぞれ異なる役割を持ち身体で行われている正常な代謝や酵素反応などに関わっています。
ビタミンB1は糖質からエネルギーをつくる過程に関係するビタミンです。ビタミンB6はたんぱく質やアミノ酸などの代謝に関わり体内のさまざまな酵素反応を支えています。ナイアシンはNAD・NADPという補酵素の構成成分となりエネルギー産生を含む多くの酸化還元反応に関係しています。
このようにビタミンB群は「毒素を吸着して身体の外へ出す」という働きをするものではありません。食事から取り入れた栄養素などを身体の中で利用するために行われる代謝反応を支える存在として考えることができます。ミネラルにもそれぞれ役割があります。
マグネシウムは多くの酵素反応に関わりエネルギー産生やたんぱく質の合成など幅広い生理機能を支えています。マンガン・亜鉛・銅もさまざまな酵素の構成成分や働きを助ける因子として利用されています。
さらに身体では代謝の過程などで活性酸素が生じます。これに対して身体には抗酸化防御の仕組みがあり玄米に含まれるビタミンEには脂質の酸化を防ぐ抗酸化作用があります。マンガン・亜鉛・銅もスーパーオキシドジスムターゼと呼ばれる抗酸化酵素に関係しています。
ただ「抗酸化」と「排出」は同じ働きではありません。抗酸化は酸化による影響から身体の成分を守る仕組みであり毒素を身体の外へ出すことを意味するものではありません。この違いを分けて理解することも玄米のデトックス効果を考えるうえでは大切です。
ここまでを見ると玄米とデトックスの関係は単純な「毒素を出す」という一本の働きではないことが分かります。玄米に含まれるビタミン・ミネラルはエネルギー代謝・アミノ酸代謝・酵素反応・抗酸化など、それぞれ異なる身体の働きに関係しています。
身体が本来持っている代謝や生理機能を正常に保つためには、こうした栄養素を食事から適切に摂取することが必要です。一方で玄米からこれらの栄養素を摂取することによって肝臓の「解毒能力」が特別に高まったり身体に蓄積した特定の有害物質が多く排泄されたりするとまではいえません。
つまり「玄米には代謝に関わるビタミン・ミネラルが含まれている」ということと「玄米を食べればデトックスできる」ということの間には科学的に区別しなければならない部分があります。玄米を「毒素を取り除く特別な食品」と考えるのではなく身体本来の正常な代謝を支えるために必要な栄養素を含む食品の一つとして捉える。この視点に立つことで玄米とデトックスの関係をより現実的に考えることができます。
そして玄米にはビタミン・ミネラルとは異なる経路から身体の「排出」と関係する成分があります。それが食物繊維です。食物繊維は消化管を通り便の形成や排便などに関わります。次は玄米の食物繊維と腸・便による排出の関係を詳しく見ていきます。
玄米の食物繊維は腸・便による排出をどう支える?
玄米と身体の排出との関係を考えるうえでビタミンやミネラルとは異なる方向から関わっているのが食物繊維です。食物繊維は人の消化酵素では消化されにくい成分で、その一部は大腸まで届きます。そこで便の形成や腸内細菌などと関わりながら身体の外へ排出されます。
食物繊維にはさまざまな種類があり、すべてが同じように働くわけではありません。水への溶けやすさ・粘性・腸内細菌による発酵のされやすさなどによって消化管での働きにも違いがあります。そのため「食物繊維を摂れば必ず便が増える」と単純に考えるのではなく、どのような食物繊維をどれくらい摂取したのかまで考える必要があります。
食物繊維と排便については多くの研究が行われています。健康な人を対象とした研究をまとめたシステマティックレビューでは食物繊維の摂取量が増えることによって便の重量や排便頻度が増え腸管通過時間が短くなる傾向が報告されています。ただ、その変化は全体として小さいものから中程度であり食物繊維の種類によっても違いがみられます。
玄米そのものを使った研究もあります。機能性便秘のある若い女性を対象に玄米を中心とした食事・白米を中心とした食事・小麦を中心とした食事を比較した研究では排便に関するいくつかの指標に違いが確認されています。ただ対象者数が少ない研究であり、この結果だけですべての人に同じ変化が起こるとはいえません。
では排便が促されることを、そのまま「デトックス」と呼んでもよいのでしょうか。ここには注意が必要です。便は食べ物の残りだけでできているわけではありません。消化されなかった食物成分・水分・腸内細菌・腸管から剥がれた細胞など、さまざまなものが含まれています。
また肝臓で処理された物質の中には胆汁を介して腸へ排泄され、その後便とともに身体の外へ出ていくものもあります。その意味では便は身体から物質を排出する経路の一つです。しかし「玄米を食べて便量や排便回数が増えた」ということと「身体に蓄積していた毒素が玄米によって排出された」ということは同じではありません。
前者については食物繊維と排便に関する科学的な研究がありますが後者を示すためには何を毒素と定義するのかを明確にしたうえで、その物質の体内量や排泄量などを実際に調べる必要があります。
また食物繊維は多ければ多いほどよいわけでもありません。急に摂取量を増やした場合には、お腹の張りやガスなどを感じることがあります。食物繊維を増やす場合には食事全体とのバランスや水分摂取なども考えながら自分に合った量を取り入れることが大切です。
玄米の食物繊維について科学的に説明できるのは「毒素を吸い取って身体をきれいにする」という働きではなく便の形成や排便など身体にもともと備わる消化管の働きと関係しているということです。
ここまで見てくると玄米とデトックスの関係には少なくとも二つの方向があることが分かります。一つはビタミン・ミネラルなどと身体の正常な代謝との関係と、もう一つは食物繊維と腸・便による排出との関係です。この二つを混同せずに考えることで「玄米デトックス」という言葉をより正確に捉えることができます。
科学的根拠から考える「玄米デトックス」の本当の意味
ここまで玄米とデトックスの関係を身体の仕組みから見てきました。では結局のところ「玄米にはデトックス効果がある」と考えてよいのでしょうか。この疑問に答えるためには玄米に含まれる成分について分かっていることと「デトックス」という言葉から想像される働きを分ける必要があります。
玄米には食物繊維・ビタミンB群・ビタミンE・マグネシウム・マンガン・亜鉛・銅などさまざまな栄養成分が含まれています。ビタミンB群やミネラルの一部は身体で行われる代謝や酵素反応に関わっています。ビタミンEには抗酸化作用があります。そして食物繊維は便の形成や排便など消化管の働きと関係しています。
一方で、これらをすべて「デトックス作用」と呼ぶことはできません。代謝は身体の中で物質を利用したり変化させたりする仕組みです。抗酸化は酸化による影響から身体の成分を守る仕組みです。排便は便を身体の外へ出す仕組みです。それぞれ関係する部分はあっても同じ生理作用ではありません。
身体に入ったさまざまな物質についても玄米がまとめて処理しているわけではありません。肝臓ではさまざまな物質が代謝され腎臓では血液を濾過しながら不要な物質などが尿へ排泄されます。腸も便を通じた排出に関わっています。
そのため「玄米を食べると身体にたまった毒素を吸着して排出する」「玄米を食べれば肝臓の解毒能力が高まる」といった説明には慎重になる必要があります。一方で玄米と身体本来の代謝・排出との接点まで否定する必要もありません。
玄米を食べることで食物繊維やさまざまなビタミン・ミネラルを食事から摂取できます。それらは便の形成・代謝・酵素反応・抗酸化など、それぞれ異なる身体の正常な働きに関係しています。つまり玄米とデトックスの関係には「直接」と「間接」を分けて考える視点が必要です。
玄米そのものが特定の毒素を取り除いて身体の外へ出すことを「直接的なデトックス」とするなら、そのような特別な作用が玄米にあると単純にいうことはできません。一方で玄米を毎日の食事の一つとして取り入れ、そこから食物繊維・ビタミン・ミネラルなどを摂取することは身体が本来行っている正常な代謝や排出を栄養面から支える食生活の一部として考えることができます。
ここには大きな違いがあります。「玄米が身体をデトックスする」のではなく身体にはもともと代謝・処理・排出する仕組みがあり玄米はその身体が必要とするさまざまな栄養成分を摂取できる食品の一つであるということです。
玄米をデトックスのための特別な食品として考える必要はありません。また短期間に玄米だけをたくさん食べたり特定の食品だけに偏ったりする必要もありません。大切なのは「毒素を出す」という一つの言葉だけで玄米を評価するのではなく食物繊維は腸や排便とどのように関係しているのかビタミン・ミネラルは身体の代謝にどのように使われているのか、それぞれを分けて考えることです。
そうして見ていくと「玄米でデトックス」という言葉の向こうには肝臓・腎臓・腸などが担う身体本来の仕組みと、それを支える毎日の食事という、もう少し広い関係が見えてきます。玄米は身体の中を掃除してくれる特別な食品ではありません。
しかし玄米に含まれるさまざまな栄養成分を知り身体が本来持っている代謝・排出の仕組みと照らし合わせて考えることで玄米とデトックスの関係を科学的な視点から捉えることができます。
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あとがき
「デトックス」という言葉からは身体の中にたまった不要なものを外へ出して、きれいな状態に戻すようなイメージを思い浮かべるかもしれません。そして玄米もまた食物繊維が含まれることなどからデトックスと結びつけて語られることがあります。
しかし身体の中を詳しく見ていくと、そこには一つの食品だけでは説明できない複雑な仕組みがあります。肝臓ではさまざまな物質が代謝・処理され腎臓では血液を濾過しながら不要な物質などが尿として排泄されます。腸からは消化されなかったものなどが便として排出されます。私たちの身体には、もともとこうした仕組みが備わっています。
玄米がそれらの臓器に代わって身体を「デトックス」してくれるわけではありません。一方で玄米には食物繊維だけでなくビタミンB群・ビタミンE・マグネシウム・マンガン・亜鉛・銅などさまざまな栄養成分が含まれています。それぞれは排便・代謝・酵素反応・抗酸化など異なる身体の働きと関係しています。
玄米とデトックスの関係を考えることで見えてくるのは「玄米が何を出してくれるのか」ということだけではありません。食べたものが身体の中でどのように利用され、どのように処理され最後にはどのように身体の外へ出ていくのか。その長い流れの中に毎日の食事もあります。
玄米を特別な「毒出し食品」と考えるのではなく一膳の玄米に含まれるさまざまな成分と身体本来の働きとのつながりを知って食べてみる。それも玄米という身近なお米を、もう一歩深く知る楽しみ方の一つなのかもしれません。
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