玄米と聞くと薄い茶色から黄褐色の米粒を思い浮かべる方が多いかもしれませんが玄米の世界には赤褐色をした「赤米」もあります。赤米は一つの品種を指す名前ではなく紅衣・ベニロマン・紅染めもち・夕やけもちなどさまざまな品種があり、うるち性ともち性の違いもあります。
では、なぜ赤米は赤いのでしょうか。また普段食べている玄米と比べると成分や炊いたときの色・香り・粒感・粘りにはどのような違いが見えてくるのでしょう。今回は赤米の品種を入り口に赤い色に関係する成分や普通の玄米との違いをたどりながら最後は実際の一膳で赤米の特徴を確かめていきます。赤い一粒から広がる玄米の品種の世界をのぞいてみましょう。
赤米とは?赤い玄米の正体を知る
赤米(あかまい)とは玄米の表面を覆う果皮・種皮などに赤褐色の色素を持つ米のことで黒米・緑米などとともに有色米の一種に分類されています。普段目にする玄米は淡い褐色や黄褐色をしていますが赤米は赤みを帯びた色合いが特徴で品種によって赤色の濃さや粒の大きさなどが異なり同じ赤米でも一粒一粒に違いが見られます。
また赤米は特定の一品種を指す名称ではありません。コシヒカリやあきたこまちがそれぞれ品種名であるのに対して赤米は米粒の色に着目した呼び方です。そのため赤米にも複数の品種があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
赤米は玄米なのか
赤米は玄米の状態で赤い色が見られる米ですが赤米という名称そのものが精米状態を表しているわけではありません。収穫した稲から籾殻を取り除いたものが玄米であり赤米も同じように籾殻を取り除くことで赤褐色の米粒が現れます。普通の玄米と同様に果皮・種皮・糠層・胚芽などが残っているため赤米ならではの色を観察することができます。
一方精米によって表面の層を取り除くと赤い部分も削られ米粒の色は白っぽく変化していきます。つまり赤米の特徴を知るうえでは玄米の状態で米粒を見ることが重要な手掛かりになるということです。
赤米にはうるち米ともち米がある
赤米には一般的なご飯として食べられるうるち性の品種と、もちもちした性質を持つもち性の品種があります。うるち性の赤米は粒感や噛み応えが特徴で、もち性の赤米では粘りやもちもちとした食感が感じられます。ただし実際の食感は品種や炊飯方法によっても変わります。赤米という色の分類だけでは食感まで決まらず同じ赤褐色の玄米でも品種によって炊いたときの印象が変わることがあります。
赤米にはどんな品種がある?
赤米には古くから各地で栽培されてきた在来種と、それらの特徴を受け継ぎながら品種改良によって育成された品種があります。代表的なものには紅衣(べにごろも)・ベニロマン・つくし赤もち・紅染めもち・夕やけもちなどがあります。
これらは同じ赤米であっても、うるち性・もち性の違いに加えて栽培に適した地域や成熟する時期などにも違いがあります。例えば紅衣は東北地方での栽培を考えて育成されたうるち性の赤米で紅染めもちは暖地向けに育成されたもち性の赤米で、おこわや餅などへの利用も考えられています。
農研機構の品種情報でも赤米にはそれぞれ異なる育成経過や特徴があることが紹介されています。代表的な赤米の品種と特徴をまとめてみました。
| 品種 | 米の性質 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 紅衣(べにごろも) | うるち | 東北向けに育成された赤米。比較的大粒で倒伏しにくい特徴を持つ |
| ベニロマン | うるち | 暖地向けに育成された赤米品種 |
| 紅更紗(べにさらさ) | うるち | 新潟県で育成された赤米品種 |
| つくし赤もち | もち | もち性を持つ赤米で九州向けに育成された品種 |
| 紅染めもち | もち | もち性の赤米で、おこわや餅などへの利用にも向く |
| 夕やけもち | もち | 東北向けに育成されたもち性の赤米品種 |
| 紅香(べにか) | もち | 香りを特徴の一つとするもち性の赤米品種 |
赤米の品種によって何が違うのか
赤米の品種を比べるときは米粒の色だけでなく食感につながる性質にも目を向けてみましょう。例えば紅衣と紅染めもちは、どちらも赤褐色の玄米ですが紅衣はうるち性で紅染めもちはもち性です。この違いは炊いたときの粘りや食感を考える手掛かりになります。
さらに品種によって粒の大きさや赤色の濃さなどにも違いがあり栽培面では成熟時期・耐冷性・倒伏への強さなども異なります。品種改良では赤米ならではの色を受け継ぎながら栽培しやすさや加工への適性なども考慮されてきました。
そのため赤米を選ぶときには品種名やうるち性・もち性を確かめることで、より具体的な特徴を知ることができます。赤米という共通の色の中にも、さまざまな品種の個性が隠されているのです。
なぜ赤米は赤い?一粒の中を見てみよう
赤米の特徴である赤褐色は米粒の表面を覆う果皮・種皮などに含まれる成分と関係しています。稲から収穫した籾には籾殻が付いていますが籾殻を取り除くと玄米が現れます。普通の玄米では淡い褐色や黄褐色に見える部分が赤米では赤褐色を帯びているのです。
赤米をよく観察すると品種によって赤色の濃さや色合いに違いが見られます。また米粒全体が均一に赤く見えるものばかりではなく部分的に色の濃淡が感じられることもあります。赤米の色を理解するには米粒の内部ではなく玄米の表面に残っている層に注目することが一つの手掛かりになります。
赤米に含まれるプロアントシアニジンとは
赤米の赤褐色に関係する代表的な成分がポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンです。プロアントシアニジンは植物に含まれる成分で複数のフラバン-3-オール類が結び付いた構造を持っています。赤米では果皮・種皮などに蓄積するポリフェノール類が赤褐色の外観に関係しています。
農研機構も赤米の特徴的な成分としてプロアントシアニジンを紹介しています。また黒米ではアントシアニンが代表的な色素として知られており同じ有色米でも色に関係する成分には違いがあります。このように米粒の色を調べることで見た目だけでは分からない成分の特徴にも目を向けることができます。
精米すると赤米の色はどうなる?
赤米を精米すると表面の赤褐色の部分が削られるため米粒の色は次第に白っぽくなります。例えば赤米の表面を一部残す分づき米では赤みが残りますが精米を進めるほど赤米らしい色合いは薄くなっていきます。農研機構が育成した赤米品種「紅衣」でも赤い部分を一部残した5分搗精米を利用した着色米飯などが紹介されています。
つまり赤米の赤い色は玄米の状態で残っている表面の層と深く関係しているのです。普段食べている玄米と赤米を並べてみると、どちらにも糠層などが残っていることは共通しています。その一方で表面に含まれる成分や色合いには違いがあり品種の特徴を知るための手掛かりになります。
赤米と普通の玄米を比べてみる
赤米と普通の玄米には共通点がある
赤米と普段食べている玄米を並べると最初に目に入るのは米粒の色の違いですが赤米は赤みを帯びた茶褐色から赤褐色をしています。一方コシヒカリやあきたこまちなど一般的な品種の玄米は薄い茶色から黄褐色をしています。
見た目は異なりますが、どちらも籾殻を取り除いたあとに果皮・種皮や糠層・胚芽などが残っている点では共通しています。また赤米も普通の玄米も主な栄養成分として炭水化物・たんぱく質・脂質などを含んでいます。つまり赤米は普通の玄米とはまったく異なる食べ物ではなく赤褐色という特徴を持った米を玄米の状態で食べるものと考えると理解できます。
赤米と普通の玄米は何が違う?
赤米と普通の玄米の違いを色・品種・米の性質などから比較してみましょう。
| 比較項目 | 赤米 | 普通の玄米 |
|---|---|---|
| 玄米の色 | 赤みのある茶褐色から赤褐色 | 薄い茶色から黄褐色 |
| 品種 | 紅衣・ベニロマン・紅染めもちなど | コシヒカリ・あきたこまち・ひとめぼれなど |
| 米の性質 | うるち性・もち性がある | 主食用ではうるち性が一般的・もち性もある |
| 色に関係する成分 | プロアントシアニジンなどが赤褐色に関係する | 果皮・種皮などに含まれる複数の成分が色合いに関係する |
| 食感 | 品種によって粒感や粘りが異なる | 品種によって粒感や粘りが異なる |
| 炊いたときの色 | 赤みを帯びた色合いが特徴 | 茶色から褐色系の色合いが一般的 |
赤米の特徴として注目したいのは米粒の外側に残る赤褐色です。この色にはポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンなどが関係しています。一方、普通の玄米にも果皮・種皮や糠層などが残っており、それらに含まれる成分などによって茶色から黄褐色の色合いが見られます。赤米と普通の玄米では色に違いがありますが、どちらも玄米として共通する構造を持っていることが分かります。
赤米と普通の玄米の栄養成分を比較する
赤米と普通の玄米には栄養成分にも違いが見られます。文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」には赤米と一般的な玄米の成分値がそれぞれ掲載されています。炊飯前の米100g当たりの数値を比較すると次のようになります。
赤米と一般的な玄米の栄養成分比較
| 栄養成分 | 赤米 | 普通の玄米 |
|---|---|---|
| エネルギー | 344kcal | 346kcal |
| たんぱく質 | 8.5g | 6.8g |
| 脂質 | 3.3g | 2.7g |
| 炭水化物 | 71.9g | 74.3g |
| 食物繊維 | 6.5g | 3.0g |
| カリウム | 290mg | 230mg |
| マグネシウム | 130mg | 110mg |
| 鉄 | 1.2mg | 2.1mg |
| 亜鉛 | 2.4mg | 1.8mg |
| ビタミンB1 | 0.38mg | 0.41mg |
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」可食部100g当たり・炊飯前の数値で赤米(食品番号01181)と玄米(食品番号01080)を比較しています。食物繊維は分析方法が異なるため数値の単純比較には注意が必要です。
この表では赤米のたんぱく質・脂質・カリウム・マグネシウム・亜鉛などが普通の玄米より高い数値となっています。一方、鉄やビタミンB1では一般的な玄米の数値が高くなっています。エネルギーは赤米が344kcal普通の玄米が346kcalで大きな違いは見られません。
また食物繊維は赤米6.5g一般的な玄米3.0gと記載されていますが両者では分析方法が異なりますので数値だけで赤米の食物繊維が一般的な玄米の2倍以上あると判断することはできません。このように栄養成分を比べると赤米だけがすべての成分で高い数値を示しているわけではないことが分かります。
栄養成分と赤い色に関係する成分は分けて考える
もう一つ知っておきたいのが食品成分表に掲載されている栄養成分と赤米の色に関係するポリフェノール類の違いです。食品成分表には、たんぱく質・脂質・炭水化物・ミネラル・ビタミンなどの数値が掲載されています。一方、赤米の赤褐色に関係するプロアントシアニジンなどは今回の栄養成分比較表には含まれていません。
赤米の特徴を知るときは一般的な栄養成分と赤米特有の色に関係する成分を分けて見ると、それぞれの違いが理解しやすくなります。また赤米には複数の品種があるため食品成分表の数値が紅衣・ベニロマンなどすべての品種にそのまま当てはまるわけではありません。
赤米を選ぶときは栄養成分の数値だけでなく品種・うるち性ともち性・色合い・炊いたときの食感などにも目を向けてみるとよいでしょう。
赤米を炊いて食べると何がわかる?
赤米について品種や赤い色の理由を知ったら次は実際に炊いて一膳のご飯として味わってみると米粒を見ているだけでは分からなかった特徴に気づくことができます。確かめたいのは単に「おいしいかどうか」だけではありません。
炊く前の玄米の色・炊き上がったときの色・香り・一粒ずつの存在感・噛み応え・粘りなどに注目すると赤米という玄米をいくつもの角度から観察できます。特に覚えておきたいのは赤米だから食感が一つに決まるわけではないことです。
赤米には紅衣やベニロマンのようなうるち性の品種がある一方、紅染めもちや夕やけもちなどのもち性品種もあります。同じ赤褐色の玄米でも、もとになる米の性質が違えば炊いたときの粘りや粒感にも違いが現れることがあります。
普通の玄米と並べて食べてみる
赤米の特徴を知る方法として試してみたいのが普段食べている玄米との食べ比べです。例えば赤米とコシヒカリやあきたこまちなどの玄米をそれぞれ炊き最初は見た目を比べてみます。普通の玄米が薄い茶色から黄褐色を基調としているのに対して赤米では赤褐色の色合いが目に入ります。
次に香りを確かめ一口食べて粒感や噛み応えを比べます。さらに噛み進めながら粘りや風味の広がり後味にも注目してみます。「赤米と普通の玄米のどちらがおいしいか」を決めたくなりますが同じ玄米でも品種や米の性質が違うと、どのような違いを感じられるのかを探してみることが食べ比べの目的です。
白米に混ぜると赤米の色が見えてくる
赤米は白米に少量を加えて炊く食べ方もあり白い米の中に赤米を加えることで赤米の色が炊飯したご飯全体にどのように現れるのかを観察しやすくなります。また赤米だけで炊いたときとは異なり白米のやわらかさや粘りと赤米の粒感を一緒に味わえるため赤米の食感を知る別の方法にもなります。
赤米の割合によって色や食感の印象も変わるため少量から加えて違いを比べてみるのも良いかもしれません。赤米を「赤い玄米」として眺めるだけではなく炊いて香りを確かめ噛んでみる。一粒の特徴を実際の一膳で確かめるところまでが赤米という品種の世界を知る楽しみ方です。
| 確かめるところ | 見てみたいポイント |
|---|---|
| 炊く前 | 赤褐色の濃さ・粒の大きさや形 |
| 炊き上がり | 色がどのように見えるか |
| 香り | 普段の玄米と比べてどう感じるか |
| 最初の食感 | 粒の存在感・硬さ・やわらかさ |
| 噛んだとき | 噛み応え・粘り・風味の変化 |
| 食べたあと | 口に残る香りや味わい |
| 品種 | うるち性かもち性かも確認する |
赤い一粒から玄米の品種を見つけてみる
赤米を初めて見たときは鮮やかな赤褐色に目が向くかもしれませんが品種について調べてみると赤米という一つの品種が存在するのではなく、その中に紅衣・ベニロマン・紅染めもち・夕やけもちなど、それぞれ異なる名前を持つ米があることが分かります。
さらに「紅衣はうるち」「夕やけもちはもち」というように米の性質まで見ていけば同じ赤米でも違った特徴を持っていることが見えてきます。そこで赤米を手に取ったときは色を見るところからもう一歩進んで「これは何という品種なのだろう?」と確かめてみるのも一つの楽しみ方です。
品種名が分かると一粒の見方が変わる
品種名が分かったら次はその米がどのように生まれたのかをたどることができます。どの地域での栽培を想定して育成されたのか。うるち性なのかもち性なのか。粒にはどのような特徴があるのか。どのような利用方法が考えられてきたのか。
田んぼで育っているときには草丈・穂の姿・成熟する時期・倒伏への強さなど茶碗の中からは見えない品種の特徴もあります。私たちが食べている一粒の赤米には「色」だけでは語りきれない品種の情報が詰まっています。
赤から黒・緑へ見方を広げてみる
赤米から品種を見る方法が分かると、ほかの有色米を見るときにも同じ視点を使えます。例えば黒米なら「なぜ紫黒色なのだろう」緑米なら「なぜ緑色に見えるのだろう」という疑問が生まれます。そこから色に関係する成分を調べ、さらに品種名・うるちともち・粒・栽培上の特徴へと進んでいけば有色米を単に色の違う米として見るだけではなくなります。
普段食べている茶色から黄褐色の玄米にもコシヒカリ・あきたこまち・ひとめぼれなどの品種があります。赤米という少し目を引く一粒を入口にして今度はいつもの玄米にも目を向けてみる。色を見ることから品種へつながり品種を知ることで一膳の玄米の楽しみ方も少しずつ変わっていきます。
あとがき
赤米について調べていると少し意外なところで日本の歴史ともつながります。現在の食卓では白いご飯が身近ですが米にはもともとさまざまな色を持つものがあり赤米も古くから伝わってきた米の一つで各地には赤米にまつわる伝承や神事が残り食べるための米というだけではない文化的な一面を見ることもできます。
さらに現在栽培されている赤米には昔から受け継がれてきたものだけでなく育種によって生まれた紅衣・ベニロマン・夕やけもちなどもあります。古くから伝わる「赤い米」という特徴を手掛かりにしながら栽培しやすさや用途などを考えて新しい品種が育てられてきました。
赤米の一粒を眺めていると、その赤褐色の向こう側に田んぼ・育種・食文化まで続いていることに気づきます。いつか赤米を見かけたら「赤米だ」で終わらず袋に書かれた小さな品種名まで探してみてください。そこからまた知らなかった米の物語が始まるかもしれません。
ここまでお読みくださりありがとうございます。さらに緑米についてご興味がおありの方は下のボックスから内部リンクしておりますのであわせてお読みください。
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